あれが…
全て嘘だったなんて、思いたくない…。

でも…桜井さんの話が嘘だという証拠だってどこにもない。
あの人が私に向けた全てが、私を騙す為のお芝居だっただなんて…

酷い…。
酷すぎる。

「あらあら…何も泣く事ないじゃない…。騙される前に気付けて良かったんだから」

「スミマセン…」

「いいのよ。わかってくれたのなら」

「帰ります…」

「気をつけてね」

「失礼します…」

ホテルを出ると高層ビルの谷間の吹き下ろしの風が容赦なく私に吹きつける。

でも今の私は…体よりも心が…
震えているの…。

あの人が私にくれた愛情の全てが脆く崩れ去って行く…。
お願い。
どうか私をもっともっと凍えさせて…
二度と溶けないくらい…固く固く凍らせて…

あの人と重ねた全ての想いを…
踏みにじるほどに…