「あ、勿論今日あたしと会った事は直人には黙っててね。浮気相手が策略に気付いたとわかったら、かえって彼の気持ちを煽るかもしれないから」

「課長は…私が簡単に騙されるような女だと思っているのでしょうか?」

「仕事を一緒にしているうちに信頼関係を築いて、あなたの気を引くつもりかもね。あたしと付き合って長いでしょう?倦怠期かもしれないわね。だからちょっとつまみ食いしたくなっても仕方ないんだけど」

つまみ食い…
それにしては随分たらふくお召し上がりになられましたこと。
あれがつまみ食いなら本当の食事は満漢全席並ね…。

「課長はそんな器用な事は出来ないと思います…」

「あなたも甘いわね。彼は営業のプロなのよ?表と裏を使い分けるプロでもあるの。あなたみたいな小娘を騙すくらい朝飯前だと思わない?」

騙していたのだ。
私の事を。

でも私の両親に会ったりした事は?
あれもシナリオにあったの?