一瞬固まってしまった表情に気付かれただろうか?

「直人から聞いてない?」

私の顔を覗き込んで何かを嗅ぎ取ろうとしながら尋ねて来る。
でも私も必死に営業スマイルを作る。

「そんな…お話は、した事ありませんから…」

「そうかしら?じゃあ何?あなたの片想い?」

「いえ…そういう気持ちじゃないんです」

「だったら何故?直人のプライベートも関係ないじゃない」

「それはあの…課長はいつも本心が読めなくて…。少しだけでも課長の素顔がわかれば業務上役に立つかもしれないと…」

「大丈夫よ。仕事の時は建前だけで」

「そう…ですか…」

「ねぇ…まどろっこしい事はあたし、嫌いなのよ。肚を割って話しましょう。あたしはあなたが直人の事好きなんだと思ってる。あたしと張り合って勝てるとでも?」

「ですから私は課長とは…」

「関係ないとは言わせないわ。あたしはね、ずっと直人の事を見てきたの。彼の様子を見ただけで、あなたの気持ちも見えたのよ。でもね、たとえ彼があなたに何を言ったにしても、所詮遊びなの。浮気なのよ」