誰が行くもんですか。
絶対に行かないわ。
外出の支度をしながらまるで自分に言い聞かせるように心の中で呟く。

彼女の魂胆なんて見え見えよ。
どうせ同期の親しい間柄を見せつけて悦に入るつもりなんでしょう。
あの人は自分のものだとでも言いたいの?

…とは言っても…
もう…私のものでもないのだけれど…

私に出来るのはただ、あの人が彼女の挑発に乗らないで欲しいと願うだけ。
聡明なあの人がそう易々と彼女に抱き込まれるとは思えない。
思えないけれど…

あの女豹の事だから、どんな罠を仕掛けてくるかわからない。
正義感の強いあの人がそこを刺激されるような事があれば…
どうなるかなんてわからない…。

あの人が彼女を何とも思っていなくとも、彼女はあの人をよくわかっているように見える。

同期としてどれだけの期間一緒に過ごしたか、どう過ごしたのかすらわからないけれど、少なくとも若かりし頃のあの人を私よりは知っているのだ。