桜井さんの言い方は納得しているのではない事を暗に匂わせている気がした。

でも私には桜井さんの真意など測れようもない。
それに、初対面の時からなんともいえない威圧感で胃が縮みそうになっている。
そもそも何故私にあそこまで威圧的なのかもわからない。
私に対する態度だけでなく、あの人に親しく接しているのも…
私に見せつける為にしているようにしか思えない。

これは単に私の被害妄想なだけなの？
あれこれ考える事に疲弊し、なんとかして早くこの場を逃れたかった。
部長がそろそろ本題に入ろうと言ってくれたのでようやく解放された。

部長室を出た所であの人と鉢合わせてしまう。

「上杉くん…大丈夫、か…？」

心配そうに尋ねてくれたあの人に、私は事務的に「はい」とだけ返答し、自席に戻った。

あの人の瞳に僅かだけれど以前のような熱が灯っていたような気がしたけれど…。

いいえ、違う。
勘違いしてはいけないわ。
今の私は心が弱ってしまっているから、いいように解釈しているだけ。
そう結論づけて私はまた、自分の仕事に戻った。