でも…
心配で心配で堪らない…。
このまま放置して、もし取り返しのつかない事にでもなったら…
その時は後悔してもしきれない。

のであれば…
私は外出先をボードに記すとすぐに公用車で会社を出た。
その足で兄のバイト先を訪ねる。

「綾?お前、こんな所までどうしたんだ?」

「お兄さん、お願いがあるの。何も聞かずにこれを持ってここへ行って」

私はあの人のマンションの住所を書き綴ったメモと、合鍵を兄に渡した。

「どういう事だ?ちゃんと説明しろ。俺だって遊んでいる訳じゃないんだ。仕事してるんだぞ?急に休んだら他の人に迷惑がかかる。綾だってそれくらいわかるだろう?」

「彼が…直人くんが大変な事になってるかもしれないの…」

「えっ?」

「体調不良で会社を休んでる…。詳しい事はわからないの…」

「どういう事だ?お前…何も知らないのか?」

「詳しい事はまだ言えないの。お願い。お兄さんしか頼める人がいないのよ…」

「お前は?一緒に行かないのか?」

「…行けない。仕事があるから…」

「はぁ?それをそっくりそのままお前に返すよ。お前は仕事抜けられなくて俺には抜けさせるってどういう了見だ、おい!」

「私への抗議は甘んじて受けるわ。今はとにかくお願いを聞いて。後からならいくらでも聞くから…」