子供じみた私は更に愚行を重ねてしまう。
決してしてはならない筈の、仕事に私情を持ち込むという行為を…。

あの人の顔を見るのが辛くて、自分の弱さを隠し切る自信がなくて、さして理由もないのに外回り先から直帰した。
営業の職員はよほどの事情がない限り一旦会社に戻らなければならない。
それはこれまで例外なく順守されてきた。
そもそも営業という仕事は結果が求められる厳しさがある反面、結果さえ出せばその過程はさほど重視されないきらいがある。
でもうちの会社はそういう風潮に易しくはない。
結果を出す事も必要だが、その為にコンプライアンス違反を見逃す程ゆるくはない。
しかも私は営業に移るまでずっと社員の教育担当をしてきた。
コンプライアンスに関しては指導する立場でありながら…

同僚の伊藤さんに電話をして直帰の報告をしただけで、直属の上司であるあの人には何も告げずにいた。

自分で選択した結果を受け入れる事が出来ないばかりか、仕事にまで影響させるなんてもってのほかなのに。
心のどこかにあの人なら許してくれるのではないかという甘えがあった。

でもそれはものの見事に打ち砕かれた。