私を軽く見ていた事を後悔させてやる。

今に見てらっしゃい!

続いて何店舗かまわったけれど、最初のお店で厳しい洗礼を受けたせいか、他の店舗ではそれほど嫌な思いをせずに済んだ。

「これで今日のところは皆まわった。次は伊藤くんだ」

「はい」

はぁ… 疲れた…。

慣れない事とはいえ、こんなに気を遣ったのはいつ以来かしら…。

しかも初っ端からアクの強い担当者にこっぴどく攻められて…

無事に終わって気持ちが緩んだせいか、一気に疲労が押し寄せる。

人事部にいた頃はどちらかというとこちら側が教える立場だったから、相手に合わせるというより、相手がこちらに合わせる事が主で。

私たちが用意したシナリオに沿ってやれば良かったのに比べ、筋書きの読めないのはなんとじれったい事か…。

相手に合わせるという事がこんなにも疲れるだなんて思ってもみなかった…。

車に戻ると伊藤さんがあたかも"緊張してます!"という面持ちで待っていた。

最初の手筈通り、伊藤さんの顧客をまわっている間、私は車の中で待機していた。

一つの店舗に要する時間は大体十分くらいと言っていたのに、課長と伊藤さんはその十分を過ぎても戻ってくる気配がなかった。

全くどこで油を売ってるんだか…

いい気なものね。