悔しいが、コイツの言ってる事は道理だ。
成田が言っていた事にも通ずる。
要は綾子が俺をどこまで信じられるかが問題なのだ。

お母さんも言ってくれたように、俺の女性遍歴が気になるならそもそも年齢の離れた男を好きになるべきではない。
経験があって当然だからだ。
中には奥手のヤツもいるだろう。
だがそんなヤツは稀だ。
逆に経験豊富だからこそ、してやれる事もある。
それを…過去に拘って疑心暗鬼になっているようではこれからだって続けて行くのは難しい。
桜井も成田も、そういう事が言いたいのだ。

俺も歯痒くて仕方ないがこれは綾子自身が決断しなければいけない事だ。

成田の言うように、俺の過去への嫉妬と、現在綾子が抱く俺への愛情と、どちらがより強いのか。

桜井の言うように、俺の言葉と桜井の言葉のどちらを信じるのか。

お父さんが言うように、綾子の思いはそんなに簡単になかった事に出来る程度だったのか。

そして…お母さんの言うように…
素直になれずに意固地になり続けるのか…。

それは綾子が選択しなければならない。
俺はあくまでも…その選択をサポートし、決断を受け入れる事しか出来ない存在だ。

だがこのまま静観しているつもりはない。
最後の最後まで…
綾子を諦めるつもりもない。

綾子を失う事は俺にとっては死の宣告と同じ。
だったら死ぬまで待てる。
俺はその命の尽きるまで、
綾子を求めてやまないだろう…。