「誰だその黒猫ってのは」

「わかってる癖に」

「お前としゃべっている暇はない。用がないならとっとと消えてくれ」

「えらい言われようね…。まぁ…いいわ。あたしをこっぴどく振ったあなたに仕返しも出来た事だし。この辺で失礼するわよ」

「仕返しだと?」

「そう。あなたは何度も私に煮え湯を飲ませた。これくらいの復讐は許されると思わない?」

「振られた腹いせにしてはやり方が陳腐過ぎて笑えるな」

「振ったって認めるの?」

「言い寄られた覚えはない」

「はぁ…鈍感もここまで来ると一種の才能ね」

「どうとでも言え」

「あたしの撒いた種。あなたたちが咲かすのか枯らすのか、これからが見ものだわね」

「どこまでも嫌な女だな」

「嫌な女で結構。だけどね、安曇野くん。これくらいで壊れるようならどうせ長続きしないわ。あの子があなたを信じるか私を信じるか。そんな事をそもそも両天秤にかける事自体間違ってるんだから」

「お前…わかっててわざと仕掛けたのか?」

「フフ…やっと認めたわね…。だって悔しいじゃない。あたしに一度も靡かなかったくせに、あんな、若い子に骨抜きにされて。あの子が本気であなたを愛してるなら…今度こそあたしは諦める。でもそうじゃなかったら…諦めないわ。これからだって、大阪と東京で離れてたって、あなたを奪ってやるから。その宣戦布告をしたのよ。それだけであなたを信じられないなら…所詮それだけの子って事。あたしのライバルにはなれないわ」