「そうね…。必死に誤魔化そうとしてたけど…あの子もあなたと同じでポーカーフェイスは苦手みたい」

フフフ…と桜井はその悍ましいほどの赤い唇を吊り上げた。

「彼女は…関係ない…。本当だ…」

「だったら私が何をしても文句ないでしょう?」

「だが俺の部下だ。お前の好きにはして欲しくない」

「今は仕事じゃなくてプライベートな時間よ。その時間に何をしようが誰と会おうがそれを咎め立てされる理由もないわ」

「とにかく彼女は関係ないんだ。お前の暇つぶしなら誰か他をあたってくれ」

「じゃああなたがあたしに付き合ってよ」

「なんで俺が?」

「あの子…とっても悩んでたわよ…。あなたの事、好きなんじゃないの?」

それは過去の話だ…。今は…違う。

「それはない。あくまでも上司と部下なだけだ」

「そうは思えなかったけど。ただの部下がどうしてあなたの過去の話を聞いて泣いたりするのかしらねぇ?」

「お前…彼女に何を吹き込んだ?」

「だから…それを教えてあげるって言ってるの。ねぇ…今からホテルのラウンジで飲み直さない?色々と…教えてあげるから…」

「結構だ」