「あら!安曇野くん、来てたのね。意外と早かったじゃない。なあに?もう皆潰れちゃったのぉ?口ほどにもないんだから」

「桜井。話がある」

「なに?そんな怖い顔して」

「こんな顔をされる覚えがあるだろう」

「何の事?」

「とぼけるな。お前、俺の部下に何を言った?」

「だから何の話よぉ?」

「誤魔化したってダメだ。こっちにはちゃんと証人だっているんだ」

「ハハ…ん。あの若いかわいい僕ちゃんが報告したんだ」

「お前が上杉くんに無理難題を押し付けたらしいが、何の権利があってそんな事をした?彼女は俺の部下だ。お前に指導される謂れはない」

「ちょっと気になって聞いてみただけよ。そこまで目くじら立てる事?」

「彼女じゃなくても、それこそ若い僕ちゃんでもよかったんじゃないのか」

「私は女だからねぇ。同じ女性がどんな風に営業してるのか、後学の為にも知りたかったの。なあに?あなたの方こそそこまで拘るのってヘンじゃない?」

「拘ってなどいない。彼女はずっと管理部門にいて、最近営業に異動したんだ。ようやく軌道に乗って来たというのにお前に変な横やりを入れてもらいたくない」

「理由はそれだけ?」

桜井の意味ありげな視線に反吐が出そうなほど嫌悪感が募った。