「あの…課長の同期の…桜井課長が…その…上杉さんに仕事の事で色々と指導のような事を…」

「何!?」

「課長…声が大きいです」

「あ、ああ、すまない…。具体的にはどんな事だ?」

「あ…えっと…俺も全部の会話を聞いてた訳じゃないんですけど…。顧客リストを見せろとか…。売上の推移とか…書類をひったくるようにして…」

「それで?」

「もうちょっと上手くやれば倍の売上になるとか…、課長の…足を引っ張ってるんじゃないか…とか…」

「何だと!?」

「課長…お願いですから落ち着いて下さい」

「…悪い…つい。それで…綾子は?」

「必死に繕ってましたけど…辛そうでした…」

綾子…なんて事だ…。

「桜井は?」

「部長と他の課長たちと…会食だとかで…あ、部長が課長も来るように…って。場所はここです」

伊藤くんは部長から預かったらしきメモをシャツのポケットから出して来た。

「わかった。すまなかったな」

「あの…課長…。桜井課長と、なんかあるんですか?」

「何もない」

「でも…あの…。桜井課長…上杉さんに言ってたんです。『直人』の足を引っ張るような事だけはしないでね…って」

あの…アマめ…!
綾子をからかって楽しみやがって!