「安曇野くん!」

駅の改札から出て来た桜井は部長を差し置き、まず俺の名前を呼んだ。

全く空気が読めないのは昔のままだ…。
それでよく課長職が務まるよな…。

「桜井。まずは部長に挨拶だろ?」

「あっ!失礼致しました…。お久しぶりです、副部長」

「桜井。今は副部長ではなく部長だろう」

「あっ!そうでした!スミマセン、部長」

「ハハハ…いい、いい。君が本社(こっち)にいた頃はまだ副部長だったからな。しかし相変わらずマイペースだな、桜井くんは」

「申し訳ありません…」

「まあいい。君の変わらぬ美貌に免じて許す」

「部長~。お口が上手なのは相変わらずですね?」

「本音を言っただけだぞ」

和やかな雰囲気で公用車に乗り込み、俺たちは会食の会場であるホテルへ向かった。

桜井はそこに宿泊予約をしていると言った。