俺はその後再び眠りに落ちた。
綾子の声で安心したのか、ぐっすりと眠れた俺はスッキリと目覚める事が出来た。

いつもより早く出勤してたまっている書類に目を通す。
するとほどなくしてフロアの社員たちが次々と出勤して来た。
部長の顔を入り口に発見した俺はすぐさま駆け寄った。

「部長、昨日はお休みを頂き申し訳ありません」

「もういいのか？」

「はい。全快とまではいきませんがほぼ快復しております」

「そうか。それなら良かった…。そうだ。ちょうど良かった。今日、君の同期の桜井(さくらい)くんが出張でここに来るんだ。昼に一緒に会食するんだが…どうだ、一緒に？」

桜井…桜井和香(さくらいわか)。
俺の同期で女性の総合職採用の一人。
美人で頭が良くて仕事も出来る、非の打ちどころがないヤツだ。

まだ新入社員の頃…何度となく俺に近づいて来た、俺にはちょっと苦手な女だ。
確か今は大阪支社で俺と同じビールの営業課長だったか？

仕事とあれば仕方ない。
別に彼女と二人っきりという訳ではないし、迷う必要はないだろう。

「了解しました。ご一緒させて頂きます」

「十一時には桜井くんを迎えに東京駅まで行く。君も一緒に乗ってくれ」

「承知致しました」