綾子…
俺を心配してお兄さんを差し向けてくれたのか…。

だが合鍵を返すという事は…
綾子の決意の表れなのか…
俺とやり直す気は既にないという…。
成田…やっぱりもう…手遅れかもしれない…。

とりあえずエネルギーチャージゼリーを流し込み、薬を飲んでからベッドに横たわった。

気付くと真夜中過ぎだった。
いつの間にか寝てしまっていたようだ。
体が信じられないくらい軽い。
薬が効いたみたいだな…。

喉の渇きを覚え、サイドテーブルのイオン飲料を口に含んだ。
熱を測ってみると平熱に下がっていて一安心した。
これなら明日は出勤しても問題ないだろう。咳はまだ少し残っているが…マスクをつけて病院でもらった咳を抑える飴を舐めておこう。

ふと気になって携帯を手に取った。
留守電が二件入っていた。

一つは伊藤くんから。
俺を心配しているお見舞いの電話だった。

そしてもう一件は…
綾子だった…。

再生するのを躊躇いながらも…恐る恐る指が再生をなぞる。

『課長。体調はいかがでしょうか。勝手に兄を差し向けて申し訳ありません。どうかお大事に』

それだけの短いメッセージだった。
だがたったこれだけでも俺は有頂天になった。
どう考えても恋人ではなく部下としてのメッセージであるにもかかわらず。
これは保護をかけて消さないようにしなくては…