気が付いた時は何故かベッドの上だった…。

あれ…？
確か玄関を開けた途端に倒れたような…
錯覚だったのだろうか？

それにしても…

布団の中の自分を確認する。
着ているのは外出した時のままだ…。
だけど…自分でここまで来た記憶もないし…
ましてこのベッドは使っていないのに…

俺は不思議な思いでしばらく動けなかった。

ベッドのサイドテーブルに何気なく目をやると…買った記憶のないイオン飲料のペットボトルが置いてある…。
ハッとして枕を見るとタオルに巻かれた氷枕があった。

なんで？
一体誰が？

考えられるのはただ一人だ。
俺は慌てて自室のドアを開けリビングに入った。

「綾子っ！」

灯りの向こうにいたのは…
俺の愛しい人ではなかった…。
その人は相変わらずの人懐っこい笑顔を見せながら言った。

「お久しぶりです。安曇野さん…」