受付を済ませ待合室で座っている間もひっきりなしに咳が出て、マスクをしていても周囲に気を遣ってしまう。
ようやく俺の順番が来た時には既にボロボロだった…。

「お待たせしました」

医者(せんせい)はこの病院の二代目で俺より年若だ。

「えっと…熱が三十八度を超えていて咳が出る、と。風邪かなぁ…一応インフルエンザの検査もしますか?」

「お願いします…」

「じゃあマスク取って下さいね」

言われるがままマスクを取ると、医者(せんせい)が綿棒の長いようなものを持って俺に近づいて来た。

「ちょっと痛いですよー」

そう言って俺の鼻に綿棒を突っ込んだ。

「いっ!」

小さく叫んだ後連続してくしゃみが出る。

「いいですよ。結果が出るまでちょっと待ってね。それで、口を開けてみて」

俺は言われた通り口を開ける。

「喉が真っ赤ですねぇ…。鼻水はどう?他に症状は?」

「鼻は…大丈夫です…。あとは…少し寒気が…」

「熱が上がりきってるから多分悪寒は治まると思いますよ。インフルならちょっと違うけど…。周囲にインフル感染者がいますか?」

「いえ…聞いてませんから…いないと思います…」

「でも通勤は電車ですよね?だったら可能性はゼロじゃないですねぇ…」