「あの…課長…。今日は今から出るんですよね?」

「そうだが…。何かあったのか?」

「いえ…方面が同じなら…一緒に行っちゃいけませんか?」

「俺は納品する訳じゃないからな…。そうだな、同行しよう」

「ありがとうございます!」

「ついでに君の顔も売って来よう。折角俺の顧客を回るんだ。それくらいしないとな」

「え…いいんですか?」

「うちの有望な若手を紹介するのはいい事だろう?」

「課長が…そう仰るなら…是非!」

「張り合いが出るな」

俺は伊藤くんを助手席に乗せ発進した。

「あの…課長…いいですか、質問しても?」

「ん?なんだ?」

「上杉さん…。泣いてましたけど…なんかあったんですか?」

泣いていたのか…
それは…可哀想だが同情は出来ない。

「昨日の直帰の件を注意した。だが悪いのは上杉くん本人であって泣くのは筋違いだな」

上司の立場として当然の事を言ったのに、伊藤くんの表情は暗く閉ざされた。