「何か言いたい事がありますか?」
「…いえ…あの…。伊藤さんに聞いて、私宛の電話もなかったし、デスクは翌朝片付ければいいと…思ったものですから…」
「言い訳は結構です。どんな理由があろうとも、原則を順守しなければ誰もが同じように電話一本で直帰するようになる。それは教育係を担当していた君なら言わずもがなだと思うが?」
綾子は驚きの表情で目を大きく見開いて俺を見た。
だが俺はそれで怯む訳にはいかない。
「言いたい事がそれだけなら、仕事に戻って下さい」
「はい…」
綾子はゆっくりと椅子から立ち上がり部屋を出た。
その覚束ない足取りを見て、心配で堪らなくなったがグッと抑えて俺もフロアに戻った。
フロアには既に彼女の姿はなかった。
ボードには行き先が彼女の筆跡で書いてあり、早々に出かけたのだとわかった。
俺は俺で自分の仕事をこなすだけだ…。
営業用のビジネスバッグに必要なものを詰め用意していると目の前に誰かが立つのに気付いた。
顔を上げるとそこには伊藤くんが立っていた。
「…いえ…あの…。伊藤さんに聞いて、私宛の電話もなかったし、デスクは翌朝片付ければいいと…思ったものですから…」
「言い訳は結構です。どんな理由があろうとも、原則を順守しなければ誰もが同じように電話一本で直帰するようになる。それは教育係を担当していた君なら言わずもがなだと思うが?」
綾子は驚きの表情で目を大きく見開いて俺を見た。
だが俺はそれで怯む訳にはいかない。
「言いたい事がそれだけなら、仕事に戻って下さい」
「はい…」
綾子はゆっくりと椅子から立ち上がり部屋を出た。
その覚束ない足取りを見て、心配で堪らなくなったがグッと抑えて俺もフロアに戻った。
フロアには既に彼女の姿はなかった。
ボードには行き先が彼女の筆跡で書いてあり、早々に出かけたのだとわかった。
俺は俺で自分の仕事をこなすだけだ…。
営業用のビジネスバッグに必要なものを詰め用意していると目の前に誰かが立つのに気付いた。
顔を上げるとそこには伊藤くんが立っていた。