私は背筋をピンと伸ばし、まず深々と担当者にお辞儀をした。

それはお辞儀の中で最も相手を敬う時にする、最敬礼。

頭をあげたと同時に、苦手な笑顔を無理矢理作る。

「初めまして…(わたくし)上杉綾子と申します。営業は初めてでご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうぞご指導とご鞭撻のほどを…」

そう挨拶して再び深く頭を下げた。

「へぇ…営業初めてなんだ?」

担当者の声が随分穏やかに変化している…。

このままもっと気分を良くしてもらわなければならない。

「はい…。何分素人でございます。右も左もわからない新参者ですので、どうか厳しく指導してやって下さい…」

担当者がどう答えるのか、恐怖を感じながら微笑みかけた。

すると担当者も笑みを見せながら言った。