「で、とりあえずメシでも食って話聞こうか?」

「そうだな…。だがここは会社から近いし…うちの人間が行きつけの店も多い。あまりうちの人間に聞かれたくないんだ…」

「おいおい。どれだけ込み入った話なんだよ?じゃ、ちょっと離れたとこ行こう」

「お前は何か食べたいものがあるのか?」

「うーん…そうだな。大阪も旨いモン多いからな、東京(こっち)で敢えてってのはねーかもな」

「じゃ、居酒屋にするか?」

「ん。別に食うのが目的じゃねーし。なんでもいい」

俺と成田は連れ立ってRホテルから出て大通りを渡り、あまりうちの会社の人間が来なさそうな大衆居酒屋に入った。

奥まった席に向かい合って座り適当に注文してから切り出した。

「話というのは他でもない。彼女から別れを言い出された」

「へ?お前、彼女いたんだ。てっきりもう男を捨てたかと思ってたぜ」

「冗談はよせ…。まだ四十そこそこなんだぞ?枯れるには早すぎるだろう」

「お前の口からそんな言葉を聞く日が来ようとはな…。別れを切り出されてお前は納得できねぇって顔だな」

「うん…未練タラタラだ…」

「ブハッ!お前、マジか!相当いい女だな。お前がそこまでメロメロっつーのは」

「ああ。まるで天女か女神だ」

「お前…大丈夫か?頭イカレちまってんぞ?」

「それくらい彼女にイカレてる…」

「みたいだな…。で?別れを宣告された理由は?」