『おい!どうした!?ひっさしぶりだなぁ!』

「急にすまない。今、大丈夫か?」

『ああ、どうせ暇な会社だ。それよりお前は?仕事中だろ?』

「外回りの途中でな。今からまわる所はないから後は帰社するだけなんだ」

『相変わらずホテイの営業か?』

「ああ…今は一課長だ」

『捜査一課長ならカッコいいけどな。ビールの営業課長ならたかが知れてる』

「だな」

『で?なんかあったんだろ?仕事の鬼みたいなお前が勤務中に俺に電話してくるなんて。どうせロクな事じゃねーんだろうけど』

コイツは昔からこうやって軽口を叩くが考えている事は意外と硬派だ。
だがその見た目と喋り方が人に誤解を与える事もしばしばだった。

「電話で話せるような事ではないんだが…急を要しているんでな」

『そうなのか?明日じゃダメか?俺、明日出張で東京(そっち)に行くんだよ』

「本当か?」

『ああ。仕事が終わればフリーだからじっくり話聞けるぜ?』

「ありがたい…。直接会って話すに越した事はないからな…」

『わかった。仕事はホテイの近くのRホテルであるんだ。それが終わるのが恐らく…十八時頃だ。お前の仕事終わりとも合うんじゃないか?』

「何が何でも終わらせるさ」

『ほぅ…珍しいな。お前からそんなセリフが出るとは。で、どんな内容なのかさわりだけ教えろよ。仕事の事なら下調べが必要かもしれない』

「生憎仕事の話ではないんだ。プライベートな話だ…」