まるで自分が傍観者になったようだった。

目の前で繰り広げられている光景は、私に端を発しているというのに…

蹲り続ける課長にどうやって声を掛けていいかわからず、かといって、軽はずみな言動を取る事も憚られ、完全に行き詰まっていた。

すると漸く、担当者が声を出した。

「安曇野さん…。わかったよ…。わかったからもう、頭あげてよ…」

課長はゆっくりと頭をあげ、担当者を見た。

「こっちも大人げなくて悪かったよ…。けどさ、それくらいホテイのやり方は酷かったって事。わかってもらえる?」

課長は顔こそあげたものの、まだ床で正座したままの体勢で言った。

「わかっております…。うちのやり方が酷かったんです。弁明の余地はありません」

「わかってもらえたなら…いいよ。いつまでもそんなカッコしてちゃ俺が虐めてるみたいじゃない。立ってよ」

「はい…」

課長はそう言って立ち上がった。

そして私の方を何か含みのある目で見た。

その課長の視線の意味を理解出来ないような私ではないわ。

ここから先は…

私一人で立ち向かう。

そうでなければ課長の行動が水の泡だって事くらい、わかっているわよ。