綾子と別れた日から俺は毎日毎日自問自答を繰り返していた。

あの時…
綾子の質問に真っ正直に答えず、虚言で誤魔化せば良かったのか?

それは違う。
そんな小賢しい事は彼女にすぐ見破られてしまっただろう。
どう考えてもあの時あれが最善の方法だったのだ。

だがその結果、今のような苦しみに晒されている。

綾子…
どうすれば君を取り戻せる?
君の心を俺に戻って来させる事が出来る?

職場では綾子に嫌でも会わなければならない。
その事が俺の首を更に強く締め付ける。
彼女を愛しいと思う心が、彼女を俺の目に釘づけて離さない。

このままでは…
誰かに気付かれてしまうかもしれない…。
そうなる前に誰かに相談した方がいい。

俺はそう思うと同時に伊藤くんの顔が脳裏に過った。
彼に…彼に相談してみるか…。

年若い部下である彼にそんな話をして上司としての尊厳なんてあったものではないだろうが、なりふり構ってなどいられない。
上司と部下という垣根を取っ払って一人の男と男として相談に乗ってもらう。

彼も言ってくれたではないか。
これからは色々恋愛の話も出来ると…

今回はその言葉に甘えさせてもらう他ない。