綾子に己の思いを話しながら、自分自身でも振り返ってみる。

綾子に言った事は紛れもない真実だった。
それをはっきり自覚すると自分の中のモヤモヤとした暗雲が去り、雲の切れ間から光が差し込むような神々しい気持ちになった。

綾子に質問されて答えたとはいえ、俺自身が気持ちと向かい合えたのが良かったのかもしれない。
綾子への愛が真の愛であると再認識出来たんだ。

そして綾子は安堵する俺とは対象的にまだどこか腑に落ちない様子で更に尋ねてきた。

「そこに…嘘偽りはないのね?」

「神懸けて…偽りはない。君がもし、俺の言葉を信じられないのであれば今すぐここで俺を殺してくれたっていい。君の手で俺の命が奪われたのであれば、お父さんも納得して下さるだろう」

「そんな事…できるわけないわ。犯罪者になりたくないもの…」

「殺めるのが無理なら…俺から去ってくれ…。いや、俺が君の前から姿を消そう…」

「私なしで生きて行くと言うの?」

「俺にとっては死よりも辛い選択だ。生きながらにして地獄の苦しみを味わう事になるのだからな…」

「私と別れる事はあなたにとって生き地獄という事ね」

「そうだ…。それほど辛い責め苦はないだろう…」

「わかりました。では別れましょう」

綾子の言葉で俺の心臓は再びその役目を終えそうになった…。