綾子は更に、本来なら聞いてもいい気がしないような付き合いの内容にまで言及してきたのだ。

具体的にはどんな風に関係を持ったのか、という事だった…。

しかしこの手の質問に対しどんな答えが正解なのだろう。
聞いた所でお互いにいい気がするとは思えない。
寧ろ嫌な気分になってしまうだろう。

綾子は一体どういうつもりでそこまで知りたがるのか…。

俺が黙っていると敏腕検察官さながらの綾子が鋭く尋ねる。

「それで?どうだったの?」

「いや…綾子、その手の話は聞いてもいい気がしないだろう?」

「言えないような内容なのね?」

「そうじゃない!そうじゃないんだが…具体的に話した所で君は信じてくれるのか?俺が自分に都合よく話をすり替えているとは思わないのか?どのみち、君が俺を信頼できるかどうか、問題はそれだけだと思うが…」

綾子は無表情なままで俺の話を聞いていた。

次に彼女の口から発せられる言葉に不安を抱きながらも、その時が来るのを待った。

「あなたは…私以外の女性と私と…明らかに違うと言いたいのね?」

「それは勿論!当然の事だ。今まで付き合って来た人たちと君とは比べるべくもない。正直に言ってあまり覚えてない事の方が多いんだ…。綾子との今が幸せすぎて…思い出す事すらもうないだろう」