恐ろしい程の静寂…。

時折聞こえるのは鹿威しのコーンという音と、木々のそよぐ音だけ…
皆一様に沈黙している。

俺が放った言葉をそれぞれがそれぞれの思いで解釈しているのか…。
言ってしまった事は撤回出来ないが、誰かにこの沈黙を破って欲しいと願ってしまう。

俺は言うべき事を言った。
それを恥ず理由はない。
綾子はずっと下を向いている。
お母さんはどこか虚ろで目の焦点が定まっていないようにも見える。

お父さんは…
俺をじっと見据えていた…。
その表情は怒りとも、悲しみとも受け取れる。

いずれにしても吉と出た訳ではなさそうだな…。

「あの…」

俺は堪えかねて自分から発言する。

「事実かどうかわかりもしていない私が言いました事で、皆さんが気分を害されたのなら謝ります。ただ、事実がどうあれ、私は信じています。お父さんもお母さんも…綾子さんも…この家族を愛しているのだと…」

「直人くん…」

綾子がようやく言葉を発してくれた。

微かに微笑んではいるが、目にはいっぱい涙を溜めている。

君を悲しませてしまったのか…俺は…。