ここで反論すべきかどうか一瞬迷う。

だがこのまま黙っていてはお父さんの言っている事を認めている事になってしまうと思い、自分の気持ちを、真剣な思いを口にした。

「そんな風に言われるのは心外です…。あくまでも綾子さんの気持ちを最優先したいと思っているだけで、私自身も常に彼女の気持ちに寄り添って、出来る限りの協力は惜しまないつもりです…」

「口で言うのは簡単だ…」

「わかっています。有言実行する所存です…」

「出来るのか?あなたも課長という要職に就いておられる。多忙な身で妻の手助けまで手が回るとは思えんが」

「そうなったらその時に考えます」

「なんだと?そんないい加減な気持ちで人の娘をくれと言うのか!」

「いい加減な気持ちで言っているのではありません。今どんなに言葉を尽くしても、所詮は絵空事です。ですが、ピンチになればその時に二人にとって最善だと思う方法を選択すればいいと考えています。今この場で未来に起きる事を予想しても、その時の自分と綾子さんの状況がどうなってるかまではわからない。わからないのに今断言する事の方が、よほど不実ではないかと思います」

「綾子。お前はこんな男と一緒になるというのか。みすみす不幸になるようなものだ。諦めなさい」

「お父さん。私は直人さん以外の人と結婚する気はありません。お父さんはどうせまた、自分の大学の後輩や、同僚の准教授とお見合いさせる心づもりなのでしょうけれど、私は絶対に嫌です」

また、見合い?