和室は程よい広さで座卓の大きさも大きすぎず小さすぎず、初対面の会食に丁度いい大きさだと思った。

仲居に注文を済ませ、俺は早速本題に入った。

「この度はご両親のお許しも得ずに勝手を致しまして申し訳ありません」

俺は座布団を外し正座してまずお母さんに謝罪した。

「あら、そんなに畏まらないで宜しいのよ。私は主人とは違いますから…」

「いえ。きちんとお許しを頂いた上で行動すべきでした。私が至りませず痛感の極みです」

「あの…お母さん、これには色々と訳が…」

和明(かずあき)から聞いてるわ。あの子がたきつけたんですってね」

「お兄さんから…連絡があったの?」

「私には定期的に連絡してくれているのよ。あなたに黙っていてごめんなさいね」

「そうだったの…」

「和明が太鼓判を押していたわ。安曇野さんなら必ず綾子を幸せにして下さるから安心しろってね」

「恐縮です…」

「不束な娘ですが、どうか末長く宜しくお願い致します」

お母さんはそう言って頭を下げた。

「お母さん!頭を上げて下さい!私の方こそ…綾子さんのような素敵な女性と出逢えて果報者だと思っております…。私は綾子さんより一回りも年上です。お母さんには、ご心配の事と思いますが…」

俺は自分の全てを受け入れてもらうべく、意を決してそう言った。