そして更にその翌日。

出勤前に電話をしていた綾子が言った。

「直人くん、母に話したらいきなり今日はどうだろうって言うの。急過ぎるわよね?」

「いや、ちょっと待って。今確認してみる」

俺は鞄から手帳を取り出し、スケジュールを見た。

「今日は君と午後二時の訪問以外は変更可能な所ばかりだ。なんとかなると思う」

「そう?だったらお昼より少し前に会えば大丈夫ね」

「うん。ちょっと早いが十一時頃はどうだろう?場所は…Cホテルの一階にある和食の店でどうだ?」

「ええ。それでいいでしょう。母に連絡するわ」



**********

約束の時間に俺と綾子はCホテルのロビーでお母さんと対面した。

綾子のお母さんは上品な雰囲気で綾子に面差しが似ていた。

「初めまして…。安曇野と申します」

「綾子の母でございます。娘がいつもお世話になっております」

「とりあえずお店に参りましょうか」

予約していた旨を告げると、和服姿の仲居が部屋に案内してくれた。

「個室なんて取ったの?」

「その方が落ち着けていいと思ってな」