でも、きっと笑っていても目は笑っていないような…

誰も信じていないと思わされる、そんな雰囲気だった…。

おおよそ磯貝課長とは似ても似つかない。

自然に私の心の中に入ってくるような、柔和な笑みを湛えている磯貝課長とは雲泥の差。

こんな上司の元で私…仕事が出来るんだろうか…。

折角の磯貝課長の思いも、気泡に帰すかもしれないわね…。

最初の目的地に降り立つと、課長は私の事など気遣う様子もなく一人でスタスタと歩いて行く。

今まで管理部門にいて、一日の歩数が大した事ない私にとって、ハイヒールで歩くってだけでも苦痛なのに…

営業している割に、そんな気遣いも出来ないのね…。

お店のバックヤードとやらの奥にある部屋の前で課長は立ち止まり、私に向き直った。

「名刺を用意して」

「はい」

言われた通り名刺ケースから出来上がったばかりのまだインクの匂いが残る四号規格の紙を取り出す。

それを見ると同時に課長はドアを開け中に入った。