翌日帰宅すると綾子が言った。

「連絡してみたの。父ではなく、母にだけれど」

「そうか!それで…?」

「うん…。母はまぁ、怒ってはいなかったわ。父には折りを見て話してみると言ってるの」

「お母さんには、同棲している事も言ったのか?」

「ええ」

「怒っていらしたか?」

「驚いたとは言っていたけれど、怒ってはいなかったわ。ただ、父には黙っていた方がいいだろうって。まずは母一人であなたに会いたいのだそうよ。どうする?」

「お母さんがそう仰るなら、その通りにした方がいいだろうな。お父さんの事を一番理解していらっしゃるのはお母さんだから」

「…うん」

「早速段取りしないとな。お母さんのご都合のいい日に一緒に夕食でもどうだ?」

「夜はマズイかもしれないわね。父がいるし…。昼間の方がいいわ」

夜はお父さんが帰宅しているから専業主婦であるお母さんが外出するのはお父さんが好ましく思わないらしい。

厳格な人だそうだからそれもわからなくもない。

だがたまに外で食事する程度なら問題ないのでは?

いや、お父さんをよくわかっている綾子の言う事だから俺が意見するのは間違っている。

「そうか…。ならば俺と綾子が同行する日に時間を調整するか?」

「そうね。それがいいわ」