「えぇ!?」

兄はとても驚いていた。
無理もない。
綾子より一回りも年上の俺は兄よりも年上だ。
そんな男が夜遅く、いきなり交際の許しを得に来たとなれば誰だって驚くだろう。

「突然このような時間にお願いする事ではないと重々承知しております。でもどうしてもこれだけは言いたかったんです…」

「あ、いえ、俺がビックリしたのは、そういう事じゃなくて…。綾がまだ舌の根も乾かないうちに実行したんだなって」

「は?」

「お兄さん!」

綾子が慌てて兄の口を押えようとした。

「あの…どういう、事でしょうか?」

兄は綾子の顔をチラリと見た。
綾子は諦めたように俯いている。

「言っていいだろ、綾?」

「ダメだと言っても言う気なんでしょう?」

「だな」

兄妹二人の会話が全く見えない俺はその場で立ち尽くしたまま微動だに出来なかった。