綾子、早く俺の名前を呼ぶ事に慣れてくれ。
君の声で名前を囁かれると何とも言えない心地になるんだ…。

ふと寝入った筈の綾子が身じろぎをして、目を覚ます。

「あ…私…眠っていたのね…」

「ああ…悪かったな…。疲れているのに…」

「あなたのせいじゃないわ…。私も…嬉しかったの…」

「綾子…」

俺はそっと彼女を抱き締める。

「か…いえ…な、直人さん…」

「ん?」

「あの…直人…くん…って呼んでも…いい?」

「え?」

「やっぱりダメ?」

「いや…ダメじゃないよ…。でもなんていうか…ちょっと照れるな…」

「あなたが私との年の差を気にしているなら…そう呼ぶ方がいいと思うの…」

なるほど…
確かに彼女の言う通りかもしれない…。
こんな年の男にくん付けとはいかがなものかと思ったが、言われてみれば納得出来る。

「綾子がそうしたいなら…構わないよ…。そう、呼んでくれ」

「ありがとう…」

「体は…大丈夫か…?」

「少し…気怠いわ…。でもね…心はとても満たされているの…。実感してるの、あなたと…本当に結ばれたんだって…」

「君は本当に…」

「え?」

「無意識にそういう煽るような事を言うなよ…」

「煽った?」

「うん。責任取ってくれるか?」

「え?…えっと…でもあの…」

「冗談だよ。いきなり無理させられるか」

「直人くん…」

「やっぱり…恥ずかしいな…」

「フフ…慣れるわよ、そのうちね」