彼女は俯いたまま何も言わない。
その無表情からは何の感情も読み取れない。

仕事の方がずっと楽だと思った。

彼女の気持ちが見えない。
喜んでいるのかも、悲しんでいるのかも…

「上杉くん…。遠慮しないではっきり言ってくれ…。それなりの…覚悟はしている…だから…」

「綾子でいいです」

「え?」

「上杉くん、ではなく…。綾子と…呼んで下さい…」

「上…いや…それは…その…イエスと受け取ってもいいの、か?」

「はい…。私も…忘れようと思っても忘れられませんでした…。上司と部下の関係に戻ろうと思ったけど…無理でした…。あなたを想う度…苦しくて…悲しくて…どうしようもないほど好きで…」

「綾子…!」

俺はソファから思わず立ち上がり、向かい側に座っている彼女を思いっきり抱き締めた。

「もう…離さない…。愛してる…綾子…」

「私も…」

俺は少しだけ体を離し、彼女の頬に触れた。
そしてそっと彼女の可憐な唇に自分のそれを重ねた…。

ああ…まだ信じられない…。

俺の腕の中にいる愛しい存在はこれからの俺の人生に鮮やかな彩を添えてくれる、まさに美しい花だ。