「不幸になるなんて、誰にわかるのですか？それを知っているのは運命だけです。どんなに優良な条件が揃っていても不幸になっている人はいます」

「その通りだ。俺もいくら考えた所で答えなど出なかった。それならば気持ちに素直になろうと思ったんだ。たとえ君がもう、俺の事を上司としか見られなくても…これは俺のケジメとして、君に本心を伝えたいと思った」

「課長…。あの時…私が告白したあの時、もう私を思っていて下さったのですか？」

「…照れくさいが…そうだ…。恐らく君と出会った時から俺は…君に惹かれていたんだと…思う」

「でもずっと…私には壁を作っておられましたよね？いつも真顔でしたし」

「そうしなければ自分の気持ちを抑える事が出来なかったんだ。俺は不器用な人間だ。公私混同してしまってはいけないと自分を律したんだ」

「そんな風には全く見えませんでした」

「すまない…。それは俺の立場上致し方ない事だった…。君だけを特別扱いする事は出来なかった」

「それは当然です。仕事なんですから公平に扱って頂くべきです。でも…二人でいる時には…その域を超えても良かったのではないですか？あれだけ私の気持ちを打ち明けていたのですから」

「一度でも決壊してしまったら、恐らく俺の想いは氾濫していただろう…。仕事の時でも…抑えられなかったかもしれない…」

「そんなに情熱的だとは知りませんでした」

「君のせいだ…」

「えっ？」

「君だけだ…。俺を…この年になってからまるで少年に戻ったようにさせたのは…」

「課長…」

「返事を聞かせて欲しい…。俺は…君と結婚を前提に交際したいと思っている」