途中携帯を確認したが、彼女から特別メッセージは受けていなかった。

持っている紙袋の存在に気付くだろうか。
気付かれたっていい。
彼女が受け取ってくれなければ所詮ガラクタ同然なんだ。

十分ほど待っていると、改札の向こうに愛しい姿を確認した。
出てくる彼女に近づいてその手に提げられた紙袋を素早く奪う。

「お疲れ様です…」

「お疲れ様。重かっただろ?悪かったな」

「いえ。私が言い出した事なので」

減らず口も愛しくて堪らない。

並んで歩く歩道はいつも見慣れている筈なのに、違って見える。一人で歩いていると暗く感じるのに、今夜は明るく見えて不思議な気持ちだった。

自宅に着くと彼女はこれもまた購入したらしき真新しいエプロンを着けた。
その姿だけで俺は完全にノックアウトされていた。

「あの…課長…着替えてこられたら?」

「えっ?」

「お疲れでしょう。簡単な物しか作れませんけど、待っている間に着替えてきて下さい」

事務的な言い方ではあるが、まるで新婚夫婦のような会話に頬が緩む。

「わかった」