残業もなく業務を終え、俺は帰り仕度を始めた。
彼女と連れ立って帰る事は出来ないから、俺の自宅の最寄り駅で待ち合わせをした。

課内でまだ残っている部下に声をかけて俺は急ぎ足でフロアを出た。
彼女は食材を買ってから来ると言っていた。

少しなら…時間があるな。
俺は駅前にあるデパートに寄った。
アクセサリー売場なんて数年振りだ。
今夜で最後になったとしても、俺はこの気持ちを形でも表したかった。

店員が近づいてくる。

「何かお探しでしょうか?」

「はい。あの…プレゼントなんですが…」

「どういったアイテムをお探しでしょうか?指輪、ネックレス、ブレスレットなど多数取り揃えておりますが」

指輪はサイズがわからない。
ブレスレットは作業の妨げになるかもしれない。

「ネックレスを…」

「ネックレスでございますね。それでしたらこちらでございます」

沢山の美しいネックレスがケースの中で光っていた。
端から順に見ていくと、一つのネックレスが俺の目を捉えた。

それは薄いピンク色の透き通った石の周りを透明な小さい石で囲んだ、花のような形のトップがついているネックレスだった。

「お気に召した物がございましたでしょうか?」

「あの、花の形のネックレスを…」

「お取りしますね」

店員が手袋をつけ、ショーケースからネックレスを取り出して見せてくれた。

間違いなく似合いそうだ。

「じゃあ…これで」

「ありがとうございます!お客様お目が高くていらっしゃいますね。真ん中の石はピンクダイヤで周りもメレダイヤでございます」

宝石など詳しくは知らないが、かなりいい物だという事はわかった。
その値段からもそれは間違いない。

プレゼント用に包装してもらい俺はデパートを出た。