そして俺は次の日。

予定通り彼女と二人で得意先へ向かっていた。

今日こそ俺の本当の気持ちを話す。
そう思うとハンドルを握る手にも自然と力が入る。
緊張し過ぎて汗も出てきた。
彼女は相変わらず無表情で無言のままだ。

この重苦しい沈黙を破るのは当然俺でなくてはならない。

「う、上杉くん…」

「はい」

「君に話したい事がある…。今夜…時間を取れないか?」

「……」

まずい。

今更なんの話があるのかという雰囲気がありありと伝わってくる…。
何も言わない彼女からは怖いほどの否定的なオーラが漂っている。

「無理か?」

「なんの…お話でしょうか?」

「勤務中に出来る話ではないんだ…。出来れば、ゆっくりと落ち着ける場所で…食事でもしながら話したいんだが」

「課長とはプライベートな時間を共にしない事にしましたので、無理です」

おっと…
そう来たか…。

落ち着け、落ち着くんだ…。
これくらいの言われようは、覚悟の上だった筈だ。

「君の気持ちはわかった。だが俺はまだ君にきちんと話していない。これで最後にするから、どうか承諾して欲しい…」

俺はありったけの誠意を込めて、彼女に懇願した。