「課長…まさか…そのお相手って…上杉さんですか？」

誠に勘の冴えている彼に脱帽だった。
彼女の顔が鮮明に蘇り、顔に熱が灯るのが自分でもわかるくらいだった。

そして俺と彼女が急接近したのが落合の一件だという事も、伊藤くんは見抜いていた。
だが彼でなくても一連の流れを考えれば誰だって辿り着ける結論らしい…。

年齢の事をしきりに気にする俺に、彼はなんでもない事だとエールを送ってくれた。

彼女と俺はとてもお似合いの二人だと…。

見た目にもさほど年の差は感じられないと、言ってくれた。
彼にも大切な彼女(ひと)がいるから色んな話をしていこうと言われ、俺もなんだか嬉しくなった。

まだ彼女に俺の真意を話していないというのに俺の頭の中では既に二人の関係は先へ進んでいる。

この妄想を現実のものにしたい。

ようやく俺の気持ちを素直に彼女に話せるような気がしてきた。
そして伊藤くんは更に俺の決意を固めてくれるような事を教えてくれた。

彼女はとても勘が鋭く、俺の悩みにもすぐに気付くだろうと言うのだ。
という事は、俺が年齢的な事や過去の失敗を危惧して悩んでいたのも気付いていたのか？

それで自分から身を引くような事を言ったのか？

ならばそれは大きな間違いだ。

彼女の幸せを考えたからこそ、迷っていたのだ。
だが彼女の様子を思い出すといよいよ危機感が迫ってくる。

よし。もう迷わない。

彼女を…
俺の大切な人を…絶対に諦めない。

もう二度と、その瞳に悲しみを宿らせない。

二度とその手を離さないから…