伊藤くんは俺の口から出たまさかの発言に戸惑いを隠せないようだ。

それは…仕方のない事だ。

普段は仕事以外の話を殆どしないし、彼からプライベートな話を聞かされる事はあっても俺の方からそういった話をした事などないからだ。

「いや…だからその…女だったとして、一回り年上の男に魅力を感じると思うか?」

彼は俺の質問に自分は女じゃないからわからないと答えた。

当然の答えだった。

だが俺には相談できるような適当な女友達などいない訳で、わかってはいても彼に相談してみるしかなかったのだ。

「そうだよな…。やっぱり…」

俺は明らかに落胆していた。

彼の口から少しでも肯定的な意見が聞けたならと、一縷の望みを抱いていたのが滑稽すぎる。

所詮俺に彼女は高嶺の花だったのだ。

だが伊藤くんは俺にとって少しだけ嬉しい事も言ってくれた。

「あ、でも…別にいいんじゃないですか?相手がいいなら」

そうなんだが…

彼女はいいって言っている、いや、正確には彼女から告白されたんだ。

でも、そもそもその恋情が勘違いという事もある。

だからその辺を君に推理してもらいたんだよ…。

現実問題として考えると難しいのではないかと聞いてみる。
彼女の将来を考えるなら猶更だ。

すると彼は既に付き合っているのかと聞いてきた。

俺はまだ付き合ってるという段階ではなく、ただ食事やドライブをしているだけの関係だと言った。