今日は営業部に着任した初日で、私ともう一人の男性を課内の皆さんに紹介した後、私たちは部長室に呼ばれていた。

男性は伊藤晴彦(いとうはるひこ)と名乗った。

今の私には、彼の事は眼中になかった。

だってそれどころではないのだもの。

自分がこれから慣れない部署で、どんな風に仕事をしていいのか。

それを考えるだけで頭が一杯になっていたから…。

部屋に通されると私たち以外にも何人かいた。

そこにいた人たちは男女問わず、やはりとても容姿が優れている人たちだった。

彼らは納得して営業部へ来たのだろうか…。

それとも…

私と同じように承服しかねる思いで、でも仕方なく来たのだろうか…。

私はそんな当てどもない事を考えながら、促されたソファに座った。

営業部長の挨拶から始まり、各課長の紹介、そして新任の私たちが順番に氏名を名乗って会釈をした。

人数が多い事もあり、自己紹介は名乗るだけで留め置かれた。

それは今から部長が大切な話をするための布石でもあった。