だがどんなに思い悩んでいようとも俺はホテイビール本社営業課の課長だ。

しかも扱っているのはビール。

発泡酒でも第三のビールでもない正真正銘のビールだ。

時代が移り変わりビール以外の安価な酒がたくさん売られている中、ビールを売り続けなければならない。

四つある営業課の中でも一番しんどいのがうちの課だ。

花形である営業部門で常にトップの成績を維持するために、日々奮闘する部下を束ねていくのが俺の役目。

時には叱咤激励し時には静観し、部下の様子に合わせ、その時に彼らに一番適したアドバイスをする。

それがいかに精神的な負荷を伴うかは言うまでもない。

だがどれだけ辛くても俺は常に部下たちの一歩先を行く。

そうしなければとてもじゃないが、下されたミッションなどこなせない。

だからプライベートな悩みでへこんでいる暇などないのだ…。

彼女が二度と俺に熱い瞳を向けてくれなくても、毎日顔を合わせなければならない。

仕事上では個人的感情を挟むことは許されない。

そして…

俺の本当の気持ちにも…

気付かれてはならないんだ…。