俺の誘いに簡単には乗らないだろうと思ってはいたが、予想以上に彼女は頑なだった。

あれだけ怖い思いをした彼女を一人にしてはいけないという上司の立場と、一緒にいたいという男としての感情が俺を思いきった行動に走らせる。

送るのがダメなら食事に行こうと誘った。

食事なんてもっとダメだろう。

思った通り、彼女はまたもや俺を拒否した。

わかっていた事なのに…
彼女のつれない態度が俺の独占欲を更に掻き立てる。
これまでの俺が煮え切らない態度を見せていたからこそ、彼女がそんな態度になっているというのに。
それをどこかで覆したい欲求が俺を駆り立てた。

「頑固者」と彼女に呟く。

一体どの口がそう言うのだ、と自分でも思う。
恐らく彼女はその言葉で気分を害したのだろう。一瞬ではあったが眉間に皺が寄った。

そしてそのまま無視を決め込んでその場から立ち去ろうとする。

彼女と俺の距離が離れて行くのに堪えられず、俺は思わず彼女を両腕に抱えた…。

華奢な彼女は思いのほか軽くて、俺は恋情を抑える事が出来なくなった。

腕の中で必死に逃れようともがく彼女をもっと強く腕の中に閉じ込めようとする。

腕力で男に叶う筈もない癖に、彼女の抵抗は激しさを増し。

これ以上拒んだら、きっと彼女は俺に見切りをつけるだろうと不安になった俺は条件付きで彼女を下ろした。

決して逃げないと、約束させた。

自分でも卑怯なやり方だと思う。

だがどうしてもこのまま彼女と離れたくなかった。

そしてそのまま彼女を行きつけの店に連れて行った。