本当は…あの時…

彼女の方から唇を重ねて来た時…

思わず抱きしめそうになった…。

そしてその可憐な唇を無遠慮に貪ってしまいたい衝動に駆られた。

でも俺はその衝動を、脳内全部の理性をかき集めて堪えた…。
俺みたいな男が純粋な百合の花のような彼女を…穢れのない人生を汚してはいけないと思った。

彼女は不幸なトラブルに巻き込まれて、自制心を失くしているだけだ。

たまたまそばにいたのが俺だったから…
それを恋だと錯覚しただけに過ぎない。

錯覚ならいつかは覚める。

その時に惨めな思いをするくらいなら…
いっそのこと突き放してしまった方がいい。

彼女のようにスレていない女は、年上の男に幻想を抱きがちだ。
だけど現実にぶち当たった時必ず後悔する事になる。

だから俺は彼女の人生に傷をつけてはならない。
俺のような男に関わればロクな事がない。