俺は自分の気持ちに蓋をして、一緒に異動して来た伊藤くんと彼女に上司として分け隔てなく接した。

自らの不安や焦燥を隠す事なく話してくれる伊藤くんと違い、彼女は全く相談事を俺に持ち込まなかった。

それが彼女の精一杯の強がりだと、気付いてやる事すら出来ず…

俺は彼女とは一線引いて接するようになっていった。

そんな状況にも慣れたと思っていた頃に彼女の気持ちを知らされるなんて…

初めて彼女に会った時の、あの時の気持ちをずっと密かにでも持ち続けていれば…

俺たちの関係は変わったのだろうか?

彼女の必死の告白に、素直な俺の気持ちを曝け出していたら…

いや、やはりそれは出来ない。

してはいけないんだ。