「上杉くん。今回の人選は上層部の肝いりなんです。営業の業績がガタ落ちになり、精査した所、一番の理由が営業職員の傲慢さにあった事が判明しました。そこで上層部が思い切った策を講じました。その策というのは、営業の経験のない容姿の優れた、且つ人当りのいい人材を新たに営業に置く、というものです…。そして管理部門からそれに見合った人選をするよう、各課長に指令が下りました。私も所詮サラリーマンですから…上からの命令には逆らえない…。かといって、どうでもいい人材を推す事はプライドが許さない…。私としても、君を出すのは苦渋の選択だったのです…」

課長も声が震えていた…。

「上杉くん…。私の秘蔵っ子の君を手放さなければならなくなった私の気持ちを…汲んでくれませんか?」

「課長…」

「私はね…、君なら絶対に営業部を、いや、この会社を立て直せると思ったからこそ、心を鬼にして今回の決定をしたのです…。君を手放すのはうちにとっても痛い。でもね、君が育ててくれた人材が、うちでは確実に育っている。第二の君になれるよう、皆頑張ってくれています…。君のその高い能力を…今度は営業部で奮って下さい…。これが私の…君への餞の言葉です…」

私は溢れる涙で課長の顔を見る事が出来なかった…。