目の前の惨状に驚きながらも事態を把握しようとする伊藤さんに、課長は守衛を呼んでくれと頼んだ。

伊藤さんと共に走ってやってきた守衛もこの有様に驚きを隠せない様子だった。

そして課長は守衛に酒売り場の責任者も呼ぶように言う。

守衛にも立ち会ってもらい、責任者に状況の説明をする課長。

少し手荒な真似をする事になった事を通り一辺倒な謝罪をまじえて説明する。

だが責任者の口から出たのは意外な言葉だった。

他の会社の営業からも苦情が絶えなかったという熊に対して、穏便な措置をとお願いしてきたのだ。

一体何を考えてるの?

私だけではとどまらず、他社にも迷惑をかけていたならそんな生易しい処分でいい訳はないでしょう!

そして課長は毅然と言い放った。

「勿論、彼がこれ以上うちの部下に迷惑行為をしないとお約束頂けるなら、こちらも事を荒立てるつもりはありません。しかし、今後も同じような事が起きるなら、こちらとしても考えがあります」

そして伊藤さんの方をチラッと見る。

阿吽の呼吸で伊藤さんが自分の家族に警察のOBがいる事を説明し、最悪厳重注意くらいはあるかもしれないと言うと、責任者も熊も顔面蒼白になっていた。