上司の品格

「課長。私は課長の事が好きです。一人の男性として」

「……」

思いもよらぬ私の告白に黙り込む課長。

予想外の話だとわかっていても無反応な課長の姿は私を不安にさせる。

「黙らないで何か言って下さい」

「……」

「課長!」

痺れを切らし、大きな声を出した。

「…あ…えっと…どう…いう…」

は?

なんなの?
その…歯切れの悪い反応は?

まさかまだ、私の気持ちに気付いていないの?

「ここまではっきり言ってもまだわかりませんか?」

「いや…その…なんというか…」

課長はフロントガラスの方を向いたまま口ごもる。

うやむやにされるのが一番嫌いなの。

私の片想いだとわかっているけれど、曖昧に濁されるのだけは我慢ならなかった。

「課長。ちゃんと私の方を向いて下さい。私の顔を見て」

ゆっくりと振り向いた瞬間。

私は課長の頬を両手で捉え、唇に触れた…。

「…!」

唇を離すと驚愕の表情の課長がいた。

「これでもまだ…わかりませんか?」

「いやさすがに…わかる…」

「よかったです。わかって頂けて」

「だが…その…」

ちょっと待って!

自分勝手だとわかっているし、曖昧なのが嫌というさっきの感情と矛盾している私。

けれど今拒絶の言葉を聞いたら私はどうなってしまうかわからない。

「返事をしないで下さい。返事は求めていません。ただ…私の気持ちは…課長を想っている気持ちだけは…知って欲しかったんです…」

そのまま気まずい空気が流れる中、課長と私は目的の店に到着した。